健康は食べ物で決まる!

05 Nutrition

「食べ物が人を作る」というと、人々が好きな食べ物に変身した姿を思い浮かべるかもしれませんが、健康とウェルビーイングに関して言えば、食事に気を配ることは間違いなく重要です。

バランスのとれた質の高い食事をすることは、人生の楽しみの1つであるだけでなく、健康に良く、循環器疾患、がん、糖尿病などの一般的な生活習慣病を予防する効果もあります。

ところで、良い食事とは何でしょうか?世界中の食事ガイドラインで推奨されているのは、さまざまな食品を幅広く摂取することです。これにより、体に栄養を補給し、体の機能をサポートする十分な栄養素を確保し、健康とウェルビーイングを高めます。食品の中でもとりわけ重要なものがあります。野菜、果物、全粒穀物、不飽和植物油、魚、赤身肉などの低脂肪肉、鶏肉は良い食事の代表格です。

さらに、おいしい食べ物は、私たちを幸せな気分にしてくれます。バランスのとれた質の高い食事をすることは、幸福感、生活満足度、ウェルビーイングを向上させ、メンタル不調の予防にも有益です。

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栄養価の低い食事がもたらすリスク

健康の鍵は良い栄養にあります。世界疾病負荷研究では、栄養価の低い食事はさまざまな慢性疾患と関連し、死亡率の大きな要因であることが明らかになりました。

  • 5人に1人 世界で栄養価の低い食事が原因で死亡した人口[1]

栄養価が高くバランスの良い食事をとらない場合、多くの重大な健康状態に陥るリスクが高まる可能性があります。例えば、食事での脂肪の摂取量が多い場合、循環器疾患、糖尿病、肥満、がんなど、さまざまな健康状態に悪影響を及ぼすことがあります。

特に、飽和脂肪酸とトランス脂肪酸は有害です。研究によると、これらをオメガ3やオメガ6などの一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸を多く含む食品に替えることで、循環器疾患や全死因死亡のリスクが低下することがわかっています[2][3]。

塩も健康上問題となる食品の1つです。ナトリウム(塩分)の過剰摂取は、高血圧の発症リスクの増加に関連します[4]。さらに、ナトリウムや硝酸塩を多く含む加工肉は、がん(特に胃がん、結腸がん、直腸がん)のリスクの22%増加につながります[5]。

また、もう1つの人気食品である砂糖も、健康の敵であることが明らかになっています。甘いものの食べ過ぎは、肥満、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症のすべてのリスク上昇につながります[6]。砂糖の過剰摂取は、精神的な健康リスクも招きます。むら気になり、不安やうつ病などの精神疾患を発症する可能性が高くなります[7]。

特定の食品を過剰に摂取するとリスクが高まる可能性がありますが、特定の食品を摂取しないことも同様に危険です。いくつかの研究では、食品数のより少ない食事が死亡リスクを高める可能性があることが示されています[8]。

  • 最大15% 健康的な食生活による主ながん疾患のリスク低下

食事が健康とウェルビーイングに与える影響 

食と健康の関係は複雑です。ここでは、健康プログラムの一環として栄養を取り上げる際に考慮すべき食と健康の関係をいくつか紹介します。

  • 栄養についての知識

私たちが食べるものは、私たちの感じ方や食文化、経験のほか、栄養に関する知識によっても左右されます。優れた栄養リテラシーを身に着けることで、食事に関する知識、能力、姿勢が向上し、私たちの健康のあらゆる側面において効果的で前向きな食生活の変化をもたらすことが可能になります。より良い選択ができるようになるためには、食品に関する情報と教育が重要です。

  • 気分

健康的な食事は、前向きな感情、気分調整の向上、うつ病や不安症リスクの低下、そしてウェルビーイング全般の向上と関連性があります。健康的な食事をすることで、うつ病のスコアが改善されることが複数の研究で明らかになっており、精神疾患に対処する治療の一環として、食事の変更が提供されることもよくあります[9]。

また、研究によると、栄養価の高い食事をすることで気分が良くなる一方で、意識的に食べる物を選択して食事することも重要であることがわかっています。自分の体に何を取り入れているのかを意識することで、より健康的な食品を選択することができます。

  • 睡眠

食事と睡眠には密接な関係があります。良い食事をすれば、安眠を享受でき、日中はより機敏でいられる可能性が高まります [10]。睡眠パターンが崩れると、ホルモンが乱れ、食事摂取を調節する機能が低下する可能性があります[11]。睡眠時間が継続的に6時間未満であることは、栄養価の低い食事や健康的な食事、規則正しい食事習慣から遠ざかっていることと関連しています。幸い、このような場合でも、わずか1時間でも睡眠時間を増やすことで、食生活や健康に大きな効果が期待できます[12]。

  • 身体活動

栄養価の高い食事は、日々の活動を行うためのエネルギーとなりますが、その逆もまた然りで、定期的な運動がより良い食生活につながります[13][14][15]。このような食生活の改善は、身体活動がもたらす気分の向上や食欲の調節に起因しています。運動を続けることは、好循環をもたらします。

アクションポイント

以下は、健康とウェルビーイングの糧となるようにするための栄養ある食事に関するいくつかのアクションポイントです。  

  1. 多量栄養素について理解する。 タンパク質、脂肪、炭水化物は、食生活に欠かせない栄養素です。これらは、体にエネルギーを供給し、体の構造を維持して体組織が機能するようにします。健康的な食事では、多量栄養素を制限したり、除外したりするべきではありません。
  2. 微量栄養素を摂取する。 微量栄養素が豊富な食品を食事に取り入れることで、体の健康を容易に維持できます。例えば、ビタミンDは卵黄、ビタミンB12は牛乳、カルシウムはケールなどの緑黄色野菜、亜鉛は貝類などから摂取できます。
  3. 多様でカラフルな食材を食べる。 世界各国の栄養ガイドライン(WHO推奨事項の欄を参照)では、さまざまな食材を食べることの重要性を指摘しています。色とりどりの野菜や果物を取り入れることで、ビタミンやミネラルを含むさまざまな栄養素を簡単に摂ることができます。
  4. 塩分と砂糖を控える。 おいしく感じるかもしれませんが、この2つは健康に悪影響を与える可能性があります。これらの摂取量を減らすか、塩の代替としてハーブやスパイスなどを使用することで、長期的な健康効果が得られます。
  5. 体を動かす。 定期的な運動によって、私たちの体は身体に良い食べ物を欲すようになります。健康を維持するために必要な食べ物を求めるようになるだけでなく、運動することを気分が向上するため、体に良いものを食べたくなるのです。
  6. 記録する。 消費カロリーを把握したい、野菜や果物をもっと食べたい、タンパク質の量を増やしたい場合など、食事管理アプリは食生活の改善に役立つ優れたツールです。

参考文献

[1] Afshin, A. et al, 2019, Health effects of dietary risks in 195 countries, 1990–2017: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2017

[2] ao, X. et al, 2021, Associations of Dietary Fat Intake With Mortality From All Causes, Cardiovascular Disease, and Cancer: A Prospective Study

[3] Guasch-Ferré M. et al, 2015, Dietary fat intake and risk of cardiovascular disease and all-cause mortality in a population at high risk of cardiovascular disease  

[4] Grillo A. et al, 2019, Sodium Intake and Hypertension

Lin, Y. et al, 2020, Salt consumption and the risk of chronic diseases among Chinese adults in Ningbo city  

Newberry, S. J. et al, 2018, Sodium and Potassium Intake: Effects on Chronic Disease Outcomes and Risks

[5] Farvid, M. S. et al, 2021, Consumption of red meat and processed meat and cancer incidence: a systematic review and meta-analysis of prospective studies  

 [6] Yang, Q. et al, 2014, Added Sugar Intake and Cardiovascular Diseases Mortality Among US Adults

Laguna, J. C. et al, 2021, Simple sugar intake and cancer incidence, cancer mortality and all-cause mortality: A cohort study from the PREDIMED trial

Janzi, S. et al, 2020, Associations Between Added Sugar Intake and Risk of Four Different Cardiovascular Diseases in a Swedish Population-Based Prospective Cohort Study

[7] Knüppel, A. et al, 2017, Sugar intake from sweet food and beverages, common mental disorder and depression: prospective findings from the Whitehall II study 

[8] Kobayashi, M. et al, 2020, Association of dietary diversity with total mortality and major causes of mortality in the Japanese population: JPHC study  

Cano-Ib, N.et al, 2019, Dietary Diversity and Nutritional Adequacy among an Older Spanish Population with Metabolic Syndrome in the PREDIMED-Plus Study: A Cross-Sectional Analysis   

Neelakantan, N. et al, 2018, Diet-Quality Indexes Are Associated with a Lower Risk of Cardiovascular, Respiratory, and All-Cause Mortality among Chinese Adults

 [9] Sánchez-Villegas, A. et al, 2018, Micronutrient intake adequacy and depression risk in the SUN cohort study

Tulchinsky, T. H. 2010, Micronutrient Deficiency Conditions: Global Health Issues

Muscaritoli, M., 2021, The Impact of Nutrients on Mental Health and Well-Being: Insights From the Literature  

[10] Jacka, F. N. et al, 2017, A randomised controlled trial of dietary improvement for adults with major depression (the ‘SMILES’ trial)

[13] Castro-Diehl, C. et al, 2018, Mediterranean diet pattern and sleep duration and insomnia symptoms in the Multi-Ethnic Study of Atherosclerosis  

Binks, H., E. et al, 2020, Effects of Diet on Sleep: A Narrative Review  

[14] St-Onge, M.-P. et al, 2012, Short Sleep Duration, Glucose Dysregulation and Hormonal Regulation of Appetite in Men and Women

[15] Al Khatib, H. K. et al, 2018, Sleep extension is a feasible lifestyle intervention in free-living adults who are habitually short sleepers: a potential strategy for decreasing intake of free sugars? A randomized controlled pilot study  

Vitti-Ruela, B. V. et al, 2021, Monitored sleep extension: a feasible strategy to improve diet and women’s health

[16] Bu, F. et al, 2022, Longitudinal associations between physical activity and other health behaviours during the COVID-19 pandemic: a fixed effects analysis  

80 Pavičić Žeželj, S. et al, 2019, The association between the Mediterranean diet and high physical activity among the working population in Croatia   

81 Christofaro, D. G. D. et al, 2021, Physical Activity Is Associated With Improved Eating Habits During the COVID-19 Pandemic