人生を再確認する:
パンデミックを生きる

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  • Jia Na Corporate Photo
    Na Jia Chief Executive Officer


「COVID-19(新型コロナウイルス感染症)、コロナウイルス、パンデミック」このような聞き慣れない言葉が、私たちが日常で使用する語彙の中心になるとは思いもよりませんでした。

私たちは未曽有の時代に生きています。

「未曽有」という言葉もこれまで多用されることはありませんでしたが、現在は、経済、雇用市場、医療、エンターテイメント、航空、飲食業、スポーツ、保険においてさえ、あらゆる状況下で言及されています。そのため、このような未曽有の時代において、6年間分の比較データに裏付けられたReMarkによる第7回世界消費者調査結果の持つ意義はこれまでにも増して重要になっています。また、本年度の調査では新たに2カ国の調査対象国を追加しました。型破りな新型コロナウイルス感染症対応策で今年注目を浴びたスウェーデンがその中のひとつです。

心強いことに今回の調査でも変わらないことがあります。保険業界における消費者は依然として教養があり、テクノロジーに慣れ親しみ、保険に高い関心を持ち、保険料の割引や顧客体験の向上と引き換えにテクノロジーを求める気持ちを持っているようです。しかし、今までに例のない変化を示す側面もあります。大多数の消費者が新型コロナウイルス感染症はソーシャルディスタンスや衛生管理、旅行に関する自分の見方を永久に変えてしまうだろうと回答したことに驚く人はいないはずです。「健康は新たな富である」という既に世に知られた事実は、強力な支持を得ています。現在、消費者心理の中心にあるのは健康の大切さ、より厳密に言えば生きることへの感謝の気持ちです。本年度の調査では、ライフスタイル改善の主要目標に「運動」を選ぶ消費者や、健康維持のために健康増進アプリを使用する消費者が大幅に増えました。

「これまでそこまで重要だと思っていなかったー人間的な共感、人間的な触れ合い、人間的な対話、これらが安心感そして温かさをもたらしました」

贾娜 Chief Executive Officer

2020年という年は私たちの多くにとって「いかに事態がとてつもなく悪い方向に進んでしまうか」ということを現実に学ぶ、厳しい教育の場となっています。私たちは数字(本調査書執筆時の世界の新型コロナウイルス感染症による感染者数は3,100万人超で死亡者数は97万人超)を要約する一方で、洪水、森林火災、倒産、抗議活動、政治的対立が次々に起こるのを目の当たりにしています。私たちは自分自身の命の大切さをこれまで以上に認識するにつれて、人生がいかに不確実なものとなったかを同様に認識し、痛感するようになっています。その結果、不確実性から自分自身や家族を守るため、定期保険や重大疾病保険などの保険を求めることに対する消費者の関心は当然高まりました。

パラドックス

しかしこのような時代において、物事は必ずしもそれほど単純だとは限りません。 パラドックス(逆説)も存在します。高齢者の方が新型コロナウイルスに脆弱である事実が広く定着しているにもかかわらず、このパンデミックの嵐の中、彼らは大抵の場合かなり冷静なようです。実際のところ、はるかに多くの精神的ストレスを感じているのはミレニアル世代です。ロックダウン、ソーシャルディスタンス、厳しい雇用状況、収入の損失、不透明なパンデミック後の世界、これらすべてが要因であることは間違いありません。本年度の調査で特に重点を置いているのは精神的な健康です。消費者のメンタルヘルスやその情報を保険会社に公表することに対する彼らの安心感について理解を深めることを目指しています。

もうひとつのパラドックス(逆説)は急速なデジタル化をよそに私たちは人間的な触れ合いを望んでいるということです。個人、企業を問わず、世界中で新型コロナウイルス(とそれに伴うロックダウン)が急速なデジタル変革の促進に効果を及ぼしている様は驚異的です。保険も例外ではありません。消費者は自分たちがテクノロジーや自動化をパンデミック前よりもずっと積極的に受け入れるようになったことを認識しています。しかし、興味深いことにカスタマーサービスや保険金請求の自動化に対する信頼は逆の傾向を示しています。バーチャル化がますます進む世界に住み、その中で同僚や家族や友人との交流を続けているにもかかわらず(あるいはだからこそ)、私たちは人間的な触れ合いをこれまで以上に切望しています。ある程度予想どおりですが、非常に孤立した高齢層は機械ではなく人間との接触を明確に選びました。

消費者の声に耳を傾け、機会を逃さない

人間的な共感、人間的な触れ合い、人間的な対話、これらの言葉は慰めとなり、今やこれまで以上に大切になった温かさをもたらします。

中国語で「クライシス:危機」はwēijī(机)の2語から成り、wēiは「危険」を意味し、jī(机)は「機会」を意味します。この中国語は悲劇や困難がもたらすどんな危険の中にも機会(チャンス)が存在することを示唆しています。現在私たちにはこのパンデミックを「富を破壊するもの」ではなく「価値を促進するもの」に変えるチャンスが残っています。今回の調査で消費者はリスク認識の高まり、万人に認識された健康であることの美徳、テクノロジーを積極的に受け入れる姿勢などを伝えてくれました。これらをビジネスにいかに生かすかは私たち次第です。