新しいソリューションの運用テストを自社内で行うべき5つの理由

Testing Rev 01
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    Marisa Petriano Client Services Director

ReMarkの 「Good Life」アプリについて、北米で実施した社内運用テストでは、アプリのパフォーマンス改善や、新機能の検証という成果に加えて、社員の間で健康に対する意識向上、さらには自社ソリューションに対する思い入れが高まりました。この記事ではその方法について紹介します。

今、新たなテクノロジー・ソリューションを立ち上げようとしているとしましょう。検証は適切に実施されているでしょうか?本番でどのように機能するでしょうか?ユーザーエクスペリエンス(UX)は本当に満足できるものでしょうか?アジャイルな環境で運用している場合でも、まず本番と同じ状況で検証した方が、安心できるのではないでしょうか?

SCORが北米でReMarkのモバイルアプリ 「Good Life」 の立ち上げ準備を進める過程でこうした問題に直面しました。Good Life は ReMark が開発した健康増進アプリであり、アクティビティ(運動)や活動データ(歩数、運動消費カロリー、睡眠時間など)を継続的に記録することにより、個人の健康の指標となる「Bio Age」つまり、「生物学的年齢」を若くすることを目的としています。スマートフォンや Garmin のようなウェアラブル端末の得たデータを連携し、使うことができます(詳しくはこちらを参照)。

すでにGood Lifeの提供を開始している地域もありましたが、北米のユーザーに対してうまく行くかは確証がありませんでした。一方で企業の中には、コロナ禍において、社員との新たな関わり方やモチベーション維持の方法を模索しているところも多くありました。社内運用テストを開始した、わずか20週後には製品の品質が改善されるとともに、今後活用できるキャンペーンの企画も用意され、さらに社員との関わり方や健康に対する意識が向上しました。

製品の運用テストをまず社内で実施すべき理由を5つ、紹介します。

1. 技術の改良にはユーザーの率直なフィードバックが不可欠

技術的なレベルで言えば、運用テストを実施したことによって、社員数百人によるフィードバックの連続ループが形成されました。これは、ソフトウェア開発プロセスの最終段階である「ユーザー受け入れテスト(UAT)」のステップが一つ増えたということですが、こちらは本番環境で行われることになります。

では、どのような方法でフィードバックを収集したのでしょうか?これにはさまざまな方法が用いられ、例えば、フィードバックセッションの開催や、サポート電話窓口の設置、また社員全員を対象とした以下の調査の実施(テスト参加者以外も対象)などがあります。

  • テスト前調査:活動レベルにおける目標の設定、健康とウェルネスに対する見解の評価
  • テスト後調査:参加・不参加の理由や、ログイン後のはじめのプロセスに関するフィードバックの収集
  • ユーザー調査:テスト開始から数か月間、UXと、アプリの使用継続または中断理由を調査するために実施

ReMark の技術開発チームは、運用テストのフィードバックを活用し、アプリの改善を行いました。具体的には、UXを高めるための改善や、バックエンド機能の拡張、データ同期性能の向上、さらには新機能や特典の追加なども行いました。

2. 価値提供のためには独自の戦略が必要

Good Life アプリの普及を成功させるには、技術だけでは不十分です。今回のように、健康やウェルネスに関わるプロジェクトの運営では、途中で止めたくなる人間の自然な欲求に打ち勝つ必要があります。ユーザーの関心を集め、信頼関係を強化し、また価値の提供をし続けるためには、効果的なキャンペーン戦略が不可欠です。調査によれば、継続的な利用を促すことが重要であり、ReMarkの場合も、ユーザーの継続利用を促すキャンペーンを実施していなかった時期には、離脱率が2倍近く増加しました。そこで、離脱率を抑えるため、さまざまな行動上の動機付け要因を探りました。

チャレンジ:

チャレンジでは、2つのアプローチを検証しました。1つは、アプリに参加しているユーザー全員で一定の歩数を目標とする「コミュニティチャレンジ」であり、もう1つは、それぞれのユーザーが若返り年齢でもあるBio Ageを若くすることを目標とした「個人チャレンジ」です(「生物学的年齢モデル(BAM™)」について、詳しくはSCORウェブサイト(英語)を参照)。いずれについても、1日の平均歩数を15%増やすことに成功し、離脱率の低下に寄与しました。

友達機能:

運用テスト期間中に、新たに友達機能を追加し、アプリの中でユーザー同士が交流したり、友達にポイントを送ることができるようにしました。友達機能を追加したことで、継続利用率が上昇しました。友達から「いいね」を送られたユーザーのうち76%が、受け取ってから24時間以内に活動データの同期を行いました。

特典:

運用テスト全体をつうじて、抽選で特典(バウチャーのように賞品と直接引き換えできる特典)を提供しました。抽選特典プログラムでは、すべてのユーザーに(活動レベルにかかわらず)豪華賞品の獲得機会が与えられました。全ユーザーの約半数がポイントを賞品と交換し、新たな特典の提供によって、データを同期するユーザーが短期的に増加しました。

3. 過剰なコミュニケーションを恐れない

運用テストでは、ReMarkが持つマーケティングやコミュニケーションの専門的なノウハウも活用されました。ReMarkは、マルチチャネル・マーケティングで長年の実績があり、保険会社に対して、メールや電話、ショートメッセージサービス、インターネットをつうじた商品販売や顧客の信頼関係の強化の支援を行ってきました。 データをもとに作られたダッシュボードを利用すれば、それぞれの取り組みを追跡調査して、有効なものとそうでないものを判別し、それに応じてコミュニケーション戦略を練り直すことが可能でした。4ヵ月半にわたり、動画や、ニュースレター、アプリ内ブログ、社内ソーシャルメディアへの投稿、社内イントラネット、アプリのプッシュ通知、特別イベントに関する告知メールなど、さまざまなチャネルをつうじて、100件以上の情報発信を行いました。社員は、運用テストの参加者であるか否かにかかわらず、こうしたコンテンツに接することになりました。そのうち、キャンペーンメールを開封した者の割合は約80%、調査対象社員のうち、コミュニケーションの頻度が妥当であると回答した者の割合は88%でした。

ReMarkは、これらの最適化を図ることで、行動変容を促進できるマーケティング戦略を策定することができました。開発された様々なアセットや学んだ教訓を今後のクライアントに対しても活かすことができると確信しました。

4. ソリューションへの熱意

製品をクライアントに提供する場合、自分自身の経験に基づいて話ができることが重要です。それによって、より真実味のある提案が可能になります。これは、営業において確立された考え方です。つまり、顧客が抱える問題や、価値を置いているものごとに共感できることが、営業としての成長につながります。

テストで社員に自社モバイルアプリを試してもらうことで、クライアントに提供するソリューションや、それが顧客にもたらす効果について、意識が高まっただけでなく、社内での支持も増えました。全員が使えるようにしたことで、社員の間に、健康意識が高い人が集まる社内のネットワークが形成されました。このことは、テストの実施前と実施後に測定したネット・プロモーター・スコア(NPS)から明らかでした。立ち上げから3ヵ月後の時点でアクティブユーザーの場合、友達に Good Life を勧めたいと考える人の割合が、345%上昇しました!

5. データからわかること

Good Life には、ユーザー(社員を含みます)との信頼関係の強化、価値提供を実現し、ユーザーに対して、アクティビティを増やし、究極的には健康増進を図るよう動機付けを行う力があります。このことはテストをつうじて実証されており、SCORにとっては、数字によって裏付けられた、有力な例証になっています。社員のうち、積極的にアプリを利用したユーザーの割合は3分の1を上回り、そのうちの62%は、現在もアプリを継続的に利用しています。世界的なコロナ禍の最中にあっても、健康的な行動に影響を与えることができました。

  • 1日当たりの歩数の中央値は、コロナ禍以前の活動レベルを29%超える
  • 「活動的」に区分される社員(1日当たりの歩数が1万歩を上回る者)が93%増加
  • 「運動をしない」に区分されていた社員(1日当たりの歩数が6,000歩を下回る者)の1日当たりの歩数が、3,800歩から6,800歩に増加

自社のTechソリューションについて、テストを社内で実施することが可能である場合、それを開発プロセスのスケジュールに組み込むことは、会社だけでなく、ソリューションの将来にとっても、極めて大きな恩恵をもたらします。それは、技術面だけでなく、マーケティングや、エンゲージメント、コミュニケーションに関する戦略を、市場参入前に検証する機会にもなります。その価値は計り知れません。今回の場合、SCORは、北米でクライアントに Good Life の提供の開始にあたって、その態勢を強化できただけでなく、その結果として、現在、社員の関心を集めるとともに、健康改善にも繋がっています。

Good Lifeとそのビジネスへの活用方法について、さらに詳しい情報は、Good Lifeページをご覧ください。